◆ 無私の心

東京で自殺志願の女性を助けて電車にはねられた宮本邦彦警部の殉職は、多くの日本人が知っている事故だと思います。
今回は、この事故に関する記事で心に残ったものを紹介します。

「誠実、誠心、誠意…宮本」
警察学校では、決して器用ではなく、敬礼の際、緊張から体が右に傾いてしまっていたことを友人らは覚えている。
一方で頑固なほどに芯（しん）が強かった。
何十キロもの装備を着けての走り込みで倒れ、友人らが手を貸そうとしても「大丈夫」と拒んだ。
剣道もうまくなかった。だが真冬の夜も１人黙々と素振りを続け、友人らを追い越して入段試験に合格した。
「道産子ならではの愚直さがあった」（友人）

「駐在所希望」
警察官になって数年たったころ、同僚たちは宮本さんの配属希望先を聞いて目を丸くした。
「初任地の後、刑事や交通など皆それぞれ希望の部署を目指す。地域警察官を目指す人間もいるが、いきなり駐在所とは…」（当時の同僚）

ある主婦は当時の感激をいまだに忘れない。
小学生の娘がお金を拾って交番に届けた後、宮本さんから自宅に電話がかかってきた。
「娘さんをほめてあげてください」

そして、最後の瞬間。

「どんなに私のことを悪く言ってもいい。やめてくれ」
宮本さんは遮断機をくぐろうとする女性の前に両手を広げて立ちふさがった。
だが、興奮していた女性は振り切って線路に走り込んだ。

目撃者によると、宮本さんが発した最後の言葉は「止まってくれ」。
線路に入り、近づく急行に手を振った。急ブレーキの鋭い音が響いたが、間に合わない。とっさにホーム下の避難スペースに女性を押し込んだ。自分の体はスペースの外。それでも、最後まで微動だにしなかった。

↓こちらの記事がオリジナルです。是非全文読んでみてください。

【この道】殉職・宮本邦彦警部（上）無私の心

【この道】殉職・宮本邦彦警部（中）ふれあい　「駐在所希望」安全な町に全力

【この道】殉職・宮本邦彦警部（下）命の代償　伝えたかった「生きる」意味 


「お前が”死にたい”と言って無駄に過ごした今日は、昨日死んだやつが一生懸命”生きたかった”明日なんだ」
この有名な言葉が思い出されます。